公的年金長期的見通しを試算する財政検証
年金制度は現役世代が納める保険料と税金と積立金を財源に高齢者に給付する「賦課方式」をとっています。世代間で助け合う仕組みで、物価上昇リスク等に備えやすい半面、人口構成で現役が減り、受け取る高齢者が増えると年金の収支バランスが崩れてきます。日本のこの状況は当面続くので、財政検証で制度を見直しし維持できるようにしていくのは重要なことです。
今回の改革案を見ると
- 厚生年金に加入する労働者を増やす案で企業規模の要件は撤廃の方針を決めています。他に全業種に適用、労働時間要件を下げる、保険料の上限を上げる等の案もありますが実施までには至りません。
- 人手不足対策として一定の給与所得がある高齢者の年金給付額を減らす「在職老齢年金」撤廃で高齢者の働く意欲をそがないようにする案も検討していますが、新たに年5~6千億円程度が必要です。
会社員の配偶者が保険料を納めずに年金を受け取れる第3号被保険者の就業調整は問題ではあるがこれは撤廃せず、パートの適用拡大で吸収していく方向です。しかし容易に解決はしないでしょう。
年金の給付水準を示す指標、所得代替率
2024年度の現役世代の平均手取りは37万円でモデル年金22.6万円として所得代替率は61.2%、19年より0.5ポイント下がっています。年金を受給する高齢者が増え保険料を払う現役世代が減る中で、年金財政のバランスをとるには今後も所得代替率は下がっていくだろうと予測されます。
公的年金頼みは限界
財政検証結果によると一定の経済成長が続いて2024年比11%成長なら6%減で止まるということですが、その場合でも所得代替率は37年度まで下がり続け、順調にいっても夫婦2人で現役世代の5~6割位ということです。必要なのは企業年金や個人年金といった任意で加入する私的年金で自己資産を厚くし老後資金を補完することです。
具体的には加入者自らが運用商品などを選びその成果で受け取る年金額が変わる企業型確定拠出年金(DC)や個人型確定拠出年金(iDeCo)の拡充を進める方針です。
日本の年金給付水準は、国際的にみても所得代替率がOECD加盟国平均の6割程度で低い方です |
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税理士高野好史事務所(栃木県宇都宮市)
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